大判例

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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)2598号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は訴外坂口伸銅株式会社に対する売掛金債権を担保するため、昭和二九年四月二七日訴外坂口定郎から本件家屋に根抵当権の設定を受け、その登記を経たが、その後右根抵当権の実行により自ら競落して、昭和三二年一一月七日その所有権を取得した。右根抵当権設定の後、被告等中四名の者が坂口から本件家屋の一部をそれぞれ期間の定めなく賃借して占有しており、また他の被告五名は、原告が競落後占有状況を調査したところ、それぞれ本件家屋中の一部を占有していることが判明した。そこで原告は、被告等はいずれも根抵当権設定登記後に本件家屋を賃借ないし占有したのであるから、自らこれを競落した原告に対抗できないとして、被告会社との間に賃貸借関係の存在しないことの確認を、また他の被告等に対し所有権に基いて各占有部分の明渡を求めた。被告等は、いずれも本件家屋について賃借権ないし転借権をもつており、これらは期間の定めがないものであるが、期間の定めのない賃貸借は民法六〇二条の期間を超えない賃貸借であつて、被告等は借受当時それぞれ借受部分の引渡を受けているから、原告に対抗することができると抗弁した。

判決は、右抗弁について次のように判断してこれを排斥した。曰く、

「抵当権の実行により、抵当権設定登記后に設定された賃借権等の用益権は消滅し、競落人は抵当権が設定された当時の状態が抵当目的物を取得するものであつて、ただ、抵当権は単に目的物の交換価値の取得を目的とし、その使用価値の利用は設定者に委せられているから、目的物の利用価値を維持させるために、間もなく終了することが明らかな短期賃貸借については、抵当権者ひいて競落人にこれを甘受させて、抵当権者に対抗できるものとしたのが、民法第三百九十五条である。このような賃貸借の付着は目的物の競落価格を低下させるのが普通であるから、抵当権の利用を充分にさせるためには、同条は制限的に解さなければならない。期間の定めのない賃貸借が同法第六百二条の期間を超えない賃貸借に含まれるとする理由は、期間の定めのない賃貸借はいつでも解約の申入をすることができるからであるということであり、たしかに、いつでも解約の申入をすることができることになつているのであるが、借家法の適用によつて解約の申入は自ら使用することを必要とする場合その他正当な事由がある場合でなければできないものと厳重な制限が付され、容易に解約をすることができない状況になつていること、並びに同法第三百九十五条は一定期間、本件のような家屋の場合には三年を超えない賃貸借と規定して、一定期間の経過とともに終了することが確定しているものを予想していることからして、期間の定めのない賃貸借は短期賃貸借には包含されないものと解するのが同条の法意に沿うものと考える。それゆえ、抵当権設定登記後になされた期間の定めのない賃貸借は抵当権者に対抗することができないと云わなければならない。」

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